人と人をつなぐ「たすき」となり
人事労務管理全般をサポートします
にのだん社会保険労務士事務所だより「たすき」令和6年6月号(No.55)
【①日々雇用・すき間バイトの注意点】
前から「人手が足りない」「採用してもすぐに辞めてしまう」といった人材採用に関する悩みをよく耳にします。最近のニュースのように「退職代行」が盛んになっている話題も含め、苦労して採用した貴重な人材がいとも簡単に辞めてしまうと事業運営に大きな影響を及ぼすことになります。
かつて私は社労士として開業する前、そして開業したあと不安定な収入を少しでも補うために「日々雇用」の副業を何度か経験したことがありました。これは人材派遣のように派遣元、派遣先、派遣労働者といったトライアングルの関係ではなく、あくまで就業先と労働者との直接雇用契約(1日毎の契約)が前提の働き方でした。
しかし派遣元のように仕事を斡旋紹介する会社が存在することから昔の「日雇い派遣」と大きな違いがない印象でした。そのため、実態が伴わない日々雇用契約では、自身の経験でも労働条件通知書を交付されなかったり、工場作業開始前の安全衛生教育がほとんど行われないなど問題点がたくさんある印象でした。
現状、人手不足問題が取り上げられる中での解消方法として、日々雇用よりさらに細分化された「すき間バイト」のような働き方がCMで取り上げられ、副業兼業がひとつの流行というか気軽な働き方のような印象を与えていることに危険を感じます。実際、私が経験したような問題がすき間バイトでも多くの割合で発生していることがネットのニュースで取り上げられていました。
しかし同時に受け入れる側も「面接をせずに採用したため、こちらが期待しているような働きをする人材ではなかった」「当日仕事場に現れなかった」など双方で多くのミスマッチが起こる可能性があり、便利さだけでなくリスクが伴うことも理解しなければなりません。
日々雇用やすき間バイトを否定するつもりはないですが、決して気軽な人材活用ではないことを踏まえ、直接雇用契約に関する法律やルール、注意点など人事労務管理の専門家である社会保険労務士に相談することをおすすめします。
【②ロールプレイングの重要性】
私は春以降、新たな業務の機会を頂いています。公的機関の窓口で年金に関する手続きを行う業務です。今まで年金に携わる仕事は勤務経験を含め、社労士として開業したあとも別の機関で年金に携わる窓口業務経験があり、自分にとって年金に関する業務は切っても切れないものなのかもしれません。
ただ前から感じていたことですが、窓口での説明に専門用語が増えると相談者の方に正しく伝えることが出来ていないかもしれないという不安を感じることがあり、そのような現状に自分自身モヤモヤしているところがありました。
そんな中、窓口対応の業務に携わっている人たちが定期的に集まる勉強会に先日参加し「お客様対応をロールプレイングしましょう」というテーマの中で「役割(role)」と「演じる(play)」を練習することにより、自身で感じていた課題を解決する方法がそこにあることに気付きました。
それから車の中で相談者の方と対応する自分との会話を想像しながら練習を繰り返し、相手に伝わりやすい会話のパターンをようやく完成することが出来ました。今から約20年前ですが、食品スーパーから求人広告会社に転職した時も、営業の仕事に慣れるためロールプレイングの練習をしたことがありました。
当時、初めて飛び込みの営業をすることになり、練習のためにお客様(会社担当者)役を先輩社員の方が協力してくれました。「わたくし●●株式会社の二之段と申します」「新聞の折込で求人広告紙を発行している会社ですが、現在人材募集を予定されていませんか?」に対して「今忙しいんや帰ってよ」「なんぼするん?」「今出そうと思ってたんや。他社との違いを説明して」など様々なパターンを織り交ぜながら先輩社員の方に教育して頂いたことで、しどろもどろだった営業トークも少しずつ経験とともに上達させることが出来ました。
その頃、前職でお世話になった上司から「昔より話をするのが上手になったと思う」と言われた時は嬉しかったです。今回、相談窓口の業務を通じてロールプレイングの重要性を改めて思い出すきっかけになりました。
職種や勤務期間に関係なく従業員さんへの教育にロールプレイングは大変効果があると感じます。仕事をスタートばかりの従業員さんやスキルアップを目指したり、課題を再認識して壁にぶち当たっている従業員さんにとってロールプレイングの繰り返しが自信に繋がり、現場経験がプラスされると会社やお店にとって重要な戦力、さらには雇用継続の面からしても大きな恩恵を与えてくれるかもしれません。
~最後までお読み頂きありがとうございました~